ウイスキー愛好家の間で密かに支持を集めていた三郎丸蒸留所が生産するブレンデッドウイスキー
『十年明ノワール(Noir)』
ついに終売となることが発表されました。
スモーキーな味わいと高い完成度で注目されてきたこの1本。
この記事では、実際に十年明ノワールを飲んだ筆者が、リアルなテイスティングレビューと共に、その味わいや飲み方のおすすめ、そして後継ウイスキー「SAB.」シリーズとの違いも詳しく解説していきます。
「まだ買える?」「買う価値ある?」と気になっている方の参考になるよう、定価をコスパで評価。
購入前に、十年明Noir(ノワール)の構成原酒や味わいを知ることで、自身の趣味・嗜好に合うかどうかを確かめて下さい。
十年明ノワールとは?歴史と基本情報
銘柄 | 十年明ノワール |
---|---|
蒸溜所 | 三郎丸蒸留所 |
定価 | 4,480円 |
生産地域 | 富山県 |
アルコール度数 | 46度 |
飲みやすさ | |
当ブログコスパ評価 | |
味わいを一言で | ブレンデッドウイスキーとは思えない飲み応えとスモーキーフレーバー |
富山県の老舗蒸留所・三郎丸蒸留所によって手がけられた、こだわりのブレンデッドウイスキー「十年明ノワール(Noir)」
原点は、戦後間もない1953年に誕生したサンシャインウイスキー、当時の「太陽のような希望を」という想いが込められたこの銘柄のスピリットを引き継ぎ“新たな時代の一歩”を象徴する存在として発売されました。
シリーズを通して大切にされているのは、ウイスキーに込められた「想い」と「時間」。
十年明ノワールもまた、その哲学を継ぎつつ、新たな表現に挑んだ1本。
「買う価値はあるのか?」
筆者の感想と結論を端的にで述べると、味わいは想像以上で本格的、終売後に価格高騰する前にウイスキー愛好家は特に1度飲んでおくことをおすすめします。
スタイリッシュで趣のあるボトルデザインも気に入っていたので、終売は誠に残念…。
終売の背景と発売当初のコンセプト
「十年明ノワール(Noir)」は、若鶴酒造がリリースしたブレンデッドウイスキー。
2022年9月にリリースされ、瞬く間に全国のウイスキー愛好家の間で話題となりました。
現在はブランドとしての役割を終えることが決定し、終売品として市場での入手が難しくなりつつあります。
前作「十年明Seven」の終売を受けて登場した今作は、「より深く、より奥行きのある味わい」を追求した意欲作。
名前にある“ノワール(Noir)”はフランス語で「黒」を意味し、これまでのシリーズ以上に深みのあるブレンドと、スモーキーな香りの濃密さを象徴しています。
ブランド名の由来となった「十年明(じゅうねんみょう)」とは、蒸留所の近くにある地名にちなんだもの。
その場所はかつて菜の花畑が広がり、そこから採取される菜種油の灯りが人々の暮らしを照らしていたことにちなんでいます。
その明かりのように「心をそっと照らすウイスキーでありたい」という想いが、このシリーズには込められています。
使用原酒・スペック・定価などの基本情報
「十年明ノワール」は、三郎丸蒸留所産のヘビリーピーテッドモルトをキーモルトとし、スコットランドから輸入したグレーンウイスキー等をブレンドして造られています。
バランスのとれたスモーキーさと、モルト由来の厚みある味わいが特徴。
項目 | 内容 |
---|---|
製品名 | 十年明ノワール(JUNENMYO Noir) |
分類 | ブレンデッドウイスキー |
キーモルト | 三郎丸蒸留所のヘビリーピーテッドモルト |
その他の原酒 | スコッチグレーンウイスキー等、複数原酒をブレンド |
内容量 | 700ml |
定価(税込) | 4,928円 |
発売時期 | 2022年秋 |
特徴 | スモーキーさ・厚み・余韻の三拍子揃ったバランス |
高めのアルコール度数に加え、ヘビリーピーテッド原酒によるスモーキーな香りが特徴的。
この価格帯でありながら、三郎丸蒸留所の個性を存分に味わえる点で、非常にコストパフォーマンスが高いウイスキーだと筆者を含め多くのウイスキー愛好家から評価されています。
終売が発表されて以降、店頭やオンラインショップでは品薄が続き、定価以上での取引も見受けられるのが現状。
スモーキーなウイスキー、まとめました↓

三郎丸蒸留所と若鶴酒造の歴史
十年明ノワールを手掛けたのは、富山県砺波市にある「三郎丸蒸留所」。
1862年創業の若鶴酒造が母体で、1952年から本格的にウイスキー製造を開始しました。
地酒メーカーとしての長い歴史を背景に、近年では「The Ultimate Peat(ピートを極める)」というビジョンを掲げ、スモーキーなウイスキー造りをさらに深化させています。
特筆すべきは、2018年に開発された鋳造製国産ポットスチル「ZEMON」や、富山県産ミズナラ材でつくられた「三四郎樽」など、地元の伝統技術と革新を融合させたものづくり。
三郎丸蒸留所は単なる地ウイスキーの枠を超え、ジャパニーズウイスキーの多様性と新時代を象徴する存在へと成長を遂げ、世界に挑むクラフト蒸留所として注目を集めています。
【終売】十年明ノワールは、後継「SAB.」シリーズへ
十年明ノワールの終売を惜しむ声が広がる中、三郎丸蒸留所はその後継として新たな一手を打ち出しました。
それが、スモーキーさとブレンディング技術をさらに磨き上げた「SAB.(サブ)」シリーズ。
“伝統の継承”と“革新”をテーマに、ノワールの魅力を受け継ぎながらも、異なる個性をもった2本が登場。
ここでは、そのSAB.シリーズとはどんなウイスキーなのか、そしてノワールとどう違うのかを比較しながら解説します。
後継ウイスキー「SAB.」とは?違いと比較
「十年明ノワール(Noir)」は、2025年1月に事実上の終売となりました。
三郎丸蒸留所からの公式発表も行われ、新シリーズ「SAB.」によって、ブランド転換が進んでいくのは明らかです。
実際、三郎丸蒸留所の公式サイトでは、70年以上続いた「サンシャインウイスキー」シリーズの終売に際し、次のようなメッセージが記されています。
【70年以上にわたるサンシャインブランドの終売によせて】
北陸で最古のウイスキー蒸留所である若鶴酒造、三郎丸蒸留所。
その歴史は古く、1953年に初のウイスキー『サンシャイン ウイスキー』が誕生しました。『サンシャインウイスキー』の名称は、公募により決まったもので、「戦争の中ですべてを失った日本で水と空気と太陽光線からできる蒸留酒によってふたたび日をのぼらせよう」という思いから命名されました。以来、永らく地ウイスキーとして地域の皆様に愛されてきました。
そして、2016年、私が蒸留所に戻ってはじめてブレンドしたウイスキーが『サンシャインウイスキー プレミアム』でした。そこからさらにブレンド技術を磨き、2023年には「三郎丸ウイスキーTHE SUN 2022」がウイスキーの世界的なコンテスト「ワールド・ウイスキー・アワード(以下WWA)2023」において“ベストインターナショナル・ブレンデッドウイスキー”を受賞するなど、私にとってのブレンデッドウイスキーの原点となるウイスキーでした。
今回、歴史あるブランドの終売にあたり、寂しさを禁じえませんが、今後もよりブレンド技術を高め、いいウイスキーを造れるよう努力を重ねていきます。
(マスターブレンダー兼代表取締役社長 稲垣貴彦)
出典:三郎丸蒸溜所公式
このコメントは、単にブランドが終わるという意味だけでなく、後継ブランドへの意志ある“継承”を強く感じさせるもの。
その後継となるのが、スモーキー・ブレンデッド・ウイスキー「SAB.」シリーズ。
「SUNSET RED(サンセットレッド)」と「NIGHT BLACK(ナイトブラック)」という2本が2024年12月にリリースされ、十年明シリーズやサンシャインウイスキーブランドのDNAを受け継ぎながらも、より洗練された方向性を提示しています。
以下は、「十年明ノワール」と「SAB.」2種のスペック・コンセプトを比較した一覧表
比較項目 | 十年明ノワール | SAB. SUNSET RED | SAB. NIGHT BLACK |
---|---|---|---|
ブランド系統 | 十年明(終売) | SAB.(新ブランド) | SAB.(新ブランド) |
発売時期 | 2022年 | 2024年12月 | 2024年12月 |
アルコール度数 | 46% | 46% | 46% |
容量 | 700ml | 200ml / 700ml | 700ml |
ブレンド原酒 | 三郎丸モルト+スコッチグレーン | 三郎丸モルト+輸入グレーン | 三郎丸モルト+輸入グレーン |
味わいの傾向 | スモーキーで厚み、長い余韻 | 甘く滑らかで、リンゴ・キャラメルの優しさ | 土っぽく複雑、しっかりとしたスモーキー感 |
コンセプト | 奥行きと香りの重厚感 | スモーキー入門者にも優しいバランス | 「ピートを極める」スモーキー特化型 |
定価(税込) | 4,928円 | 約1,254円(200ml) 約3,498円(700ml) |
5,390円 |
十年明ノワールは、ウイスキーの深みや香りの重層感を楽しみたい中上級者向けであり、「SAB. SUNSET RED」はよりわかりやすく親しみやすい味わいから、スモーキーウイスキーへの入り口としてもおすすめできる設計になっています。
中でも「SAB. NIGHT BLACK」は、「十年明ノワール」の味わいにもっとも近いポジションに位置づけられており、「ピートを極める」という明確なコンセプトがあることから、ノワールが気に入った人にはぜひ試してほしい一本。
十年明ノワール(Noir)テイスティング・レビュー
ブレンデッドウイスキー 十年明ノワール(Noir)の評価は?
実際にテイスティンググラスに注ぎレビューしていきましょう。
評価軸 | 内容 |
---|---|
香り | 穀物系の甘さと軽やかなスモーク、爽やかな酸味を伴うネーブルオレンジが上品に香る。 |
味わい | スモーキーさとクリーミーな甘みが同時に広がり、徐々にビター感とフルーティーさが重なり立体感ある味わいへ。 |
余韻 | ビターと柑橘の酸味が交差する複雑なフィニッシュ。スムースながらシングルモルト並みの満足度。 |
飲みやすさ | ライトボディだが味の芯がしっかり。加水・ロック・ハイボールいずれも魅力が際立ち、幅広い層におすすめ。 |
カラーは薄く透明感のある煌びやかなイエロー。
香りは穀物系の甘い香りとスモーク。そこに爽やかに香るわずかな酸味を帯びたネーブルオレンジが軽やかさを演出。
口に含むと最初に感じるのはキレのあるスモーク、クリーミーで滑らかな印象も同時に訪れ、味わい深く感じる。
しかし、その後すぐに穏やかでゆったりとした味わいの広がり方に、ブレンデッドウイスキーである事を思い出す。
中盤あたりにはスモーキーな味わい、フルーティな甘みに乾いたビター感が混ざり合い味わいがより立体的になる。
ボディはライトだがクリーミーでバニラを思わせるニュアンスやビターでスモーキーな骨格はしっかりとしていて飲みごたえは十分にある。
終盤に向かうにつれじわじわとそのビター感は主張を強めそこに柑橘系の酸味が混ざり合い、フィニッシュを形成。ブレンデッドウイスキーらしくスムースだが、シングルモルトウイスキーにも等しい満足度が印象深く飲み応えを感じる。
加水するとフルーティーな甘みが強調され飲みやすく感じるが、スモーキーでビターな味わいば顕在。
ロックにすると滑らかなテクスチャーはそのままにエッジの効いたビタースモークがさらに際立ち満足度が高い。
ハイボールにするとキレのある炭を思わせるピートスモークと爽やかな柑橘がバランスよく絡み合いあと引く味わい。
十年明Noir(ノワール)おすすめの飲み方
十年明Noir おすすめの飲み方は、ブレンデッドウイスキーと思えないスモーキーな飲み応えはどの飲み方でもしっかりと楽しむことができ、万能といえる。
飲み方の違いで現れる特徴はそれぞれによって異なり、どれも変化する特性を楽しむことができる。
あえて筆者の好みの飲み方を1つにしぼるなら、ハイボール。
味わいを何度も確かめたくなるエッジの効いたスモーキーフレーバーと柑橘の融合、それでいてブレンデッドウイスキーならではの落ち着いた滑らかさ…これは一度試してほしい。
【終売】十年明ノワールは“買い”か?定価をコスパで評価 まとめ
Junenmyo Noir
- 三郎丸蒸溜所が生産していたブレンデッドウイスキー
- 現在は終売のため品薄
- 海外原酒を使用
- スモーキーで本格的な味わいで高い評価を得ている
「十年明ノワール(Noir)」は、本格的なスモーキーフレーバーが味わえるジャパニーズウイスキーとして、価格以上の満足感を得られる1本です。惜しまれつつも終売が決定した今こそ、その価値を再認識すべきタイミングではないでしょうか。
もし、まだ迷っているなら、以下のタイプに当てはまる方は買って後悔しないと推測できます。
買って後悔しない人のタイプ
- ピートの効いたスモーキーな味わいが好きな方
- アイラモルト(特にラフロイグやカリラetc)を好む方
- 限定品や終売ウイスキーに触れておきたいという方
- コスパの高いブレンデッドウイスキーを探している人
- 三郎丸蒸留所を始めとするジャパニーズクラフトウイスキーに興味がある方
特に「スモーキーな香りに惹かれるけど、値段は抑えたい」という方にとっては、十年明ノワールはまさに理想的な1本。
定価に対する満足度が非常に高く、アイラモルトファンにも十分響く深みあるフレーバーを実現しています。
アイラモルトを愛飲する筆者の視点から見ても、実際に飲んでみて「本格的なスモーキーフレーバーとバランスの良さは、他のアイラ系にも引けを取らない」と感じました。
終売の知らせを聞いた瞬間、正直もう1本確保しておきたいと思ったほどです。
後継「SAB.」と比較しても選ぶ価値があるか?
後継となる「SAB. SUNSET RED」「SAB. NIGHT BLACK」も魅力的なブレンデッドではありますが、味わいの方向性はやや異なります。
違いを簡単に表すなら…
十年明ノワールは「スモーキー&フルーティが調和するクラフトブレンド」
SAB. シリーズは「2種を通じてスモーキーさを入口に、多くの人が楽しめる優しい構成、そこから本格スモーキーフレーバーへの誘導」
もちろんどちらも素晴らしいのですが、バランスの良いスモーキーなウイスキーを楽しみたいなら、終売前に「十年明ノワール」を1度選んでおく価値は十分にあると、筆者は感じました。
コスパ優良
滋賀・長濱蒸溜所の人気シリーズ。
輸入原酒と自社モルトを使用したブレンデッドモルトウイスキー「アマハガン ピーテッド」
確かに感じるピート由来の複雑な味わいとバニラの甘みが調和し、穏やかで親しみやすいスモーキーさが魅力。
スモーキーな味わいのウイスキーの入門としてもおすすめの一本。
味わいをレビューしました↓

スコットランド・ハイランド地方で造られる、やや軽快なスモーキー系シングルモルト「アードモア レガシー」
バニラやトーストした麦の香りに、やさしいピートの余韻が続く。
コスパも良く、デイリーなピーテッドウイスキーとしてもオススメ。
スペイサイドの伝統的製法を守る蒸溜所が造る、ピートの香り漂う希少な一本「ベンロマック 10年」
シェリー樽熟成によるフルーティーさと、穏やかなスモークの絶妙なコンビネーション。
クラシックな味わいと程よい飲みごたえで評価が高いシングルモルトウイスキー。
この物価高のご時世にあって、あえて“値下げ”を発表した消費者に寄り添う素晴らしい蒸留所。
アイラ島を代表するシングルモルトで、洗練されたスモーキーさと潮の香りが特徴の「カリラ12年」
柑橘系の爽やかさと灰のようなピート感がバランスよく調和。
アイラ初心者から玄人まで楽しめる、完成度の高い1本。
味わいや飲み方での変化をレビュー↓

最後まで読んで頂きありがとうございました。
良いウイスキーLIFEを
国産ウイスキーの次は何を飲む…

ハイボール好きはグラスにもこだわってみよう↓

十年明ノワールの次は同じくスモーキーな国産ウイスキー↓
